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報告・レポート

ドラッグストアショーで流通BMS特別セミナーを開催
「標準EDI(流通BMS)普及推進に向けた取り組み」
~なぜ流通BMSを今導入すべきなのか~

 当協議会の正会員団体である日本チェーンドラッグストア協会主催の「Japanドラッグストアショー」が千葉の幕張メッセで開催され、ビジネスセミナーとして3月16日に「標準EDI(流通BMS)推進特別セミナー」が行われた。
 本セミナーは今年で7回目となり、「標準EDI(流通BMS)普及推進に向けた取り組み ~なぜ流通BMSを今導入すべきなのか~」と銘打って開催された。セミナーでは、総務省とNTT東日本よりIP網への円滑な移行に関して、ウエルシア薬局と花王グループカスタマーマーケティングより流通BMSの導入事例の紹介が行われた後、財務省がモデレータとなり、パネリストとして杏林堂薬局と花王グループカスタマーマーケティングを迎え、パネルディスカッションが行われた。
 このうち一部のプログラム講演要旨を紹介する。


セミナー会場風景:2018年3月16日 幕張メッセ

標準EDI(流通BMS)推進特別セミナー プログラム

開始時間 テーマ 講師
13:00 日本チェーンドラッグストア協会
業界標準化推進委員会 委員長挨拶
「標準EDI(流通BMS)の導入・推進にあたり」
日本チェーンドラッグストア協会 副会長
兼業界標準化推進委員会 委員長
            江黒 純一 氏
   ((株)クスリのマルエ 取締役会長)
13:05 経済産業省からのご挨拶 経済産業省 商務情報政策局 
 商務・サービスグループ 
  消費・流通政策課 課長補佐
            田村 真丈 氏
13:10 固定電話網のIP網への円滑な移行の在り方について
~サービス移行を中心に~
総務省 総合通信基盤局 
 電気通信事業部事業政策課 課長補佐
            宮野 光一郎 氏
13:30 固定電話のIP網への移行後のサービス及び移行スケジュールについて 東日本電信電話(株)
 ビジネス開発本部
  第一部門ネットワークサービス担当
   担当課長
            山内 健雅 氏
13:50 流通BMS導入に関して ウエルシア薬局(株)
 取締役 情報システム本部 本部長
            安倍 崇 氏
 システム運用部 部長
            棚澤 真之 氏
(株)セゾン情報システムズ
 流通ITソリューション事業部
  クラウドソリューション部 営業課
            小山 智 氏
14:10 業界標準化に向けた3つの課題
~流通システム標準化による効率化の実現 ~
花王グループカスタマーマーケティング(株)
 カスタマートレードセンター
  流通システムコラボグループ
   マネージャー
            川口 和海 氏
14:30 インボイス制度におけるシステム対応につ いて
※パネルディスカッション
財務省
 主税局税制第二課 課長補佐
            加藤 博之 氏
<パネリスト>
(株)杏林堂薬局 情報システム本部
 情報システム課 シニアマネージャー
            松山 義政 氏
花王グループカスタマーマーケティング(株)
            川口 和海 氏
15:10 流通BMS最新動向 (一財)流通システム開発センター
 ソリューション第2部 新規事業グループ
流通BMS協議会 事務局
            梶田 瞳

世の中に取り残されないように

日本チェーンドラッグストア協会 副会長 兼 業界標準化推進委員会
(㈱クスリのマルエ 取締役会長)
江黒委員長

 技術の発展が目まぐるしい。車は自動運転、電気自動車、AI。店舗でも先日の日経新聞の1面に掲載されていたがRFIDタグを利用しレジまで無人、300店舗ぐらいを1人で1時間ぐらいで棚卸ができるようになる。そういったなかで、軽減税率や流通システム、電話回線がどうなるかを財務省、経産省、総務省に、流通BMSのメリットなどを会員より紹介する。
 スピードある世の中に取り残されないように、自社に生かしてほしい。

オールジャパンでEDIの導入を!

経済産業省
商務情報政策局 商務・サービスグループ 消費・流通政策課
田村 真丈課長補佐

 RFIDタグの担当をしている。本ドラッグストアショーでRFIDの体験もできる。
 デジタルマーケティング、データの利活用は進んでいる。その中で、受発注のところがデジタル化されないのはありえない。
 ぜひ推進していただきたい。オールジャパンでEDIを導入して、生産性の向上に取り組んでいきたい。

円滑な移行を確保して欲しい

『固定電話網のIP網への円滑な移行の在り方について ~サービス移行を中心に~』

総務省
総合通信基盤局 電気通信事業部事業政策課 課長補佐
宮野 光一郎課長補佐

 固定電話契約数はメタルや黒電話のようなものが急速に減少してきている。その代わり光電話が急速に伸びてきている。光電話の基本料金は高いが、通話料は一律でメタルと比べて安くなる。NTTでは加入電話の減少、メタル電話を提供しているネットワークの中の交換機維持が限界を迎えるため、IP網への移行を検討している。
 現在は昔ながらのネットワークと新しいネットワークが併存しているが、コア網を一本化する。加入電話とISDN電話についてアクセス回線はメタルのまま、コア網はIP網にしたメタルIP電話を検討している。
 総務省としては2016年に総務大臣から情報通信審議会に対し移行を円滑に行うようにと諮問が行われた。委員会では専門家が法律、経済、技術、消費者問題の検討を行っている。開催はかなり精力的に1か月に2回程度行っていた。昨年の3月に1次答申、9月には2次答申まで実施した。利用者対応、事業者対応からの側面での円滑化を重視し対応について議論した。利用者利益の保護。移行スケジュールなどが関係してくるところ。
 NTT東西においては、IP網への移行にあたり様々なサービス停止が予定されている。今回、審議会に諮問するにあたり、サービス終了にどういった対応をすべきか提案募集をおこなった。その中で、特にINSネット(ディジタル通信モード)に対する意見が多く寄せられた。代替サービスとしてNTT東西では光のサービスを用意。他事業者による無線やどうしても対応が難しい事業者に対しては当面の補完策としてメタルIP電話を使ったデータ通信のサービスを用意している。 総務省では、INSネット(ディジタル通信モード)が世の中で広く使われていることから特別にワーキングを設置して検討した。ワーキングでは技術、法律、消費者問題の専門家とNTTや関係利用団体も参加。NTTへの質問、指摘、意見聴取を実施した。INSネット(ディジタル通信モード)を終了していくにあたって今後留意すべき点を整理いただいた。 さらに、INSネット(ディジタル通信モード)の移行のあり方の検討を参考にし、今後影響の大きい電気通信サービスを終了する際のルールのあり方についても検討した。
 1次答申では、代替策、補完策、移行スケジュール、利用者への周知、NTTの体制整備の留意点を整理。利用者からのニーズを踏まえた代替策をおこなっていく。随時改善を図っていくことが必要になる。 メタルIP網のデータ通信は、パケット化にあたりINSネットよりも遅延が生じることが分かっている。NTTで検証環境を用意して補完策が使えるかを確認できるようにする。INSネットの終了時期の早期公表も伝えた。
 利用者だけではなく関係団体、関係企業への一般的な周知の実施。便乗した悪質勧誘販売の注意喚起の実施。NTTにおいては責任体制の整備やさまざまな問い合わせ窓口体制の整備の実施。
 半年後の2次答申では、1次答申の内容に加え、NTTがさらに留意する点をまとめた。
 代替サービスについては他事業者の提供サービスへの移行促進も含めた。補完策については、検証環境で得られたデータの早期公表。他事業者、利用者の影響の有無を確定して、場合によっては周知を行う。
 アナログモデムを使った音声通信についてもNTTで検証環境を構築し、検証データの公表を行う。今後も定期的に委員会を開きNTTや関係団体と確認していく。
 2025年1月には設備の維持限界を迎えるためそれまでに移行を完了させることが必要。NTT東西ではその1年ぐらい前から全国1千台ほどある装置を交換していかなくてはいけない。メタルIP電話に変わった地域と変わっていない地域が出てくるが、利用者との契約関係を地域ごとに実施していくと混乱を招きかねないため、2024年1月の段階で全国一斉に契約を移行する。
 2022年1月には契約移行やメタルIP電話の提供状況について利用者への周知が必要である。2024年1月に全ての契約を切り替えるが、裏では2021年1月から各事業社間のIP-IP接続が始まり、2023年以降は他事業者発NTT東西のIP-IP接続が可能となる。他事業者ユーザーとNTTユーザーとの間でのISDN通信は2023年から影響が生じるのでそれを見据えた対応が必要である。
 切り替えにおいては法律に照らして十分に検討が必要。利用者への影響が大きいものはあらかじめ行政が確認し法を整備していく。現在、電気通信サービスを休廃止する場合の対応において、電気通信事業法の一部法改正を国会に提出している。現在は事後届け出制で事前対応が困難なため、利用者に影響が大きいものについては、利用者通知の内容について総務大臣に事前に届けるようにした。これによってサービス休廃止前に適宜行政が事業者の取り組み状況を確認でき、必要な場合は事業者に必要な対応を行うよう促していけるようにする。
 総務省では答申を基に事業者に対応を促すとともに制度整備、運用をしっかりと行い円滑な移行を確保していきたい。

IP網切替え前に見直しを行い、受発注の具体的なサービスを検討してほしい

『固定電話のIP網への移行後のサービス及び移行スケジュールについて』

東日本電信電話(株)
ビジネス開発本部 第一部門ネットワークサービス担当
山内 健雅担当課長

 NTT東日本として、固定電話のIP網への移行で皆さまにどのような影響が出るか、詳細をお話ししたい。 受発注で利用している通信の世界は取り巻く環境ではかなり激しく技術が進歩している。今後NTT東西としてはIP網へ切り替えていくこととなるが、皆さまにおいても現状の通信環境の見直しをしていただき、受発注の今後の具体的なサービスについても検討いただきたい。
 PSTNとは昔ながらの黒電話やISDNといったメタル回線で使うネットワークである。NTTでは2010年11月にPSTNマイグレーションについて公表。固定電話を維持するための検討内容を公表した。昨年の10月にはNTT東西で固定電話のIP網への移行について公表した。IP網へ移行するとメタルの回線がなくなるのかという声があるが、自宅で利用されている電話は維持され、継続して利用できる。
 PSTNマイグレーションを進める理由は音声を取り巻く環境が大きく変化しているためだ。携帯電話やメール、SNSなど音声から別の通信手段に変わってきている。また、電話網に利用している交換機が世界的にも2025年頃に寿命を迎えるため、IP網に移行しなくてはいけない。現状、メタルのケーブルと光のケーブルが使われている。メタル回線にある交換機が使えなくなるため、ひかり電話で利用されているようなIP網にて維持していきたい。IP網への移行後は、メタル収容装置から変換装置を通ってルーターに接続する。メタルでつなぐ電話音声サービスは引き続き利用できる。ただ、変換装置を使うと音声やFAX利用には問題ないが、INSネット ディジタル通信モードでは従来の品質が維持できなくなるため、サービスを終了する予定だ。
 IP網への移行は6年先でだいぶ先の出来事にとらえられるが、NTT東西としてはいち早く準備を行ってほしいため、2017年10月に公表を行った。NTT東西にて専用ポータルサイトも作成したので確認してほしい。
IP網移行後、基本料は変わらないが通話料は全国一律となる。IP網への切り替えは数回ご案内した上で、2024年1月に一斉に契約を切り替える。マイラインについては通信事業者間で協議しているため別途ご案内する。2024年1月に契約上は切り替えるが物理的に設備を一斉に変えるのは難しいので、2025年1月までに変えていく。早ければ2021年1月以降から他事業者とIP接続を開始するので、他事業者と通信されている状況もあると思うので、早めにINSネット ディジタル通信モードを利用されている場合は他の代替手段へ切り替えてほしい。
 IP網へ移行後に提供終了となるサービスにINSネットディジタル通信モードがある。
 INSネット ディジタル通信モードは、小規模事業者向けのINSネット64と大規模事業者向けにINSネット1500の2つのサービスがある。電話で使うのか、データ通信で使うのかは事前にNTT東西に申込み・契約いただく必要がなく、お客様側の端末が選ぶ。IP網移行後は、通話モードは引き続き使えるが、INSネットディジタル通信モードは2024年1月をもって終了となる。まずは、NTT東西が提供するINSネットであるか、実際に使っているかどうかを確認してほしい。実際に使っているかどうかは機器で判別するか、NTT東西からの請求書で判別する。代替策として、フレッツ光のサービスや他事業者が提供しているモバイル通信を含めて今の時代に合わせた通信方法を検討いただきたい。
 NTT東西としては、今後約1年に1回程度のペースで案内を行っていく。昨年11月からは、ユーザーへの周知として請求書にチラシを同封したり、DMを送っている。法人のお客様にはNTTの営業担当者から代替策のご提案を行う。 影響具合や社内への周知にご協力いただきたい。

全取引先との受発注を全て流通BMSに!

『流通BMS導入に関して』

ウエルシア薬局(株)
情報システム本部 本部長 安倍 崇取締役 
システム運用部 棚澤 真之部長
(株)セゾン情報システムズ
流通ITソリューション事業部 クラウドソリューション部 営業課 小山 智 氏

(冒頭、安倍氏より)
 全取引先との受発注をすべて流通BMSに変更した。
 流通BMSに移行した理由としては、「IP網への移行」、「取引先との通信データ量増加に伴う通信時間」、「昨年6月に立ち上げた新物流センターの管理システムの刷新」の3つがある。
ウエルシアホールディングスの概要について。
参照:http://www.welcia.co.jp/ja/company/profile.html
参照:http://www.welcia.co.jp/ja/company/groupcompany.html

(以降、棚澤氏より)
 流通BMSへの切り替えについて、具体的に苦労した点や考慮した点を説明する。
 2016年から取引先に説明を始め、何度も説明の機会を設けた。直近でも行っている。約170社を4か月で行ったが、一番苦労したのは設計・構築の部分である。2016年以前は流通BMSとは何ぞやというところからで、知識もなく苦労した。
 設計の部分では、知識のあるお取引様、花王さまに尽力いただき標準にあわせた形でJCA手順のフォーマットをマッピングした。時間がかかり苦労した点であるが、後々これがよかったと思っている。
 最終的には2017年の年明けから約170社とテストをし、6月ぐらいには全社が切り替えた。
 ウエルシアの流通BMS切り替えは大きなトラブルもなく大成功だと思っている。
 成功の鍵は3つある。一つ目は、花王さまに協力してもらって標準フォーマットにあわせた形で作成したこと。
二つ目は、取引先の理解を得たこと。三つ目は、ウエルシアのシステムをお願いしているセゾン情報システムの担当者にお客様窓口を含め全て対応してもらったことである。
 以前の仕組みでは物流センターとお取引先様との間のEDIはEDIセンターを介さなかったので、お取引先様からするとセンターとウエルシアとで接続先が分かれており、デメリットであった。これを踏まえ、流通BMSに切り替えたタイミングで、全てセゾン情報システムのEDIセンターを介して一元管理してもらうようにした。これにより、全てのデータをEDIセンターと接続してやり取りするようになった。JX手順で、XMLで対応している。将来的には、請求・支払もペーパーレスとなるようお取引先様と調整している。
 一番大きかった効果は通信時間であった。さらに、標準のため、お取引先様の拡大も行いやすいというメリットもある。M&Aも多いため新規のお取引先様も多く、流通BMS化されているとスムーズな対応ができる。色々なデータ種に対応しており、請求や支払の伝票レスに結び付けられるということも期待できる。今回は各社の協力を得て流通BMSにスムーズに対応できた。

(以降、小山氏より)
 我々のシステムは大きく以下の3つの評価もらっている。1、コスト削減。2、手厚いサポート。3、店舗や取引先の拡大をクラウドサービスで迅速に対応可能。サーバーの用意が不要で、流通BMSなど多くのプロトコルの利用が可能、サポート体制などオールインワンで多くの企業に導入いただいている。付随するサービスとして、チャットボットの自動応答サービスを開発中である。発注データの件数を通知したりといったことを考えている。

流通BMSでインボイス制度対応とIP網移行対応を乗り切ろう !

『業界標準化に向けた3つの課題~流通システム標準化による効率化の実現 ~』

花王グループカスタマーマーケティング(株)
カスタマートレードセンター 流通システムコラボグループ
川口 和海マネージャー

 2018年1月に販売会社の再編を行った。販売は花王グループカスタマーマーケティングで行うことになった。
化粧品カウンセリングについてはソフィーナとカネボウでそれぞれ会社を設立した。
 流通BMSについては、2017年度は約75社の流通BMS新規導入を行った。2016年度は約65社で昨年より少し増えた。2014年と2015年は少し低迷していたが、2016年からは新規導入が加速した。流通BMSの認知が進んできたことが背景にある。
 通信手順別売上高構成比としては、ようやくJCA手順が5割を切り、流通BMS等インターネットが追い抜いた。
2017年度の目標は流通BMSを6割にして新規導入も130社以上を掲げていたが、少し小売業様の本番化が遅れており若干達成していない。まだ49%JCA手順が残っている。引き続き流通BMS導入提案を行っており、残りの49%の約640社は、8割弱が流通BMSを導入したいという意思を確認した。、2018年度には約140社の導入を見込んでいる。流通BMSの理解度が浸透している。
 現在は大きく3つの課題が存在する。2021年からNTT東西が他事業者とのIP接続を始めるため、このタイミングで品質低下や遅延が発生しEDIへの影響が叫ばれている。小売業様がどの通信事業者と契約しているかは不明なため、突然遅延が起こったりエラーが起こる可能性もある。できるだけ2021年までにインターネットに切り替えないといけない。2021年の1月までとなるとまだ2年と10か月あるが、軽減税率の問題や消費税増税が2019年に実施されればその準備で半年から10か月が費やされる。そのため、実際には2年程度しかない。このことを認識し、なるべく早く準備いただきたい。
 流通BMS未導入の約600社は単純に6年間あれば現在のペースで切り替えていけばよいが、実質2年間となれば年間300社切り替えないといけない。そのためには人員も今の倍に増やし毎日1社ずつ切り替えるという試算になる。通信数では企業数の倍はあるのでだいたい1000~1300通信を2年間で切り替えていかないといけない。
 さらに気を付けたいのは流通BMSの本番稼働の時期は大体延期になるということだ。テストで不具合があったり、社内の関係者との調整、スケジュールの調整だけでも1週間や2週間はかかる。何かあれば最低1か月から数か月の延期になることもある。基幹システム改修も予算化、承認、開発、テストと1年以上かかることもある。こういったことも起こり得ると想定して早めの準備が必要である。
 中小企業対策モデルも必要と考えている。小売業がシステム会社から貸与されたハンディターミナルで発注を行えばそのまま卸・メーカーにデータが飛ぶモデルが良いのではないかと思う。このスキームについての課題は既にこういったサービスがあるにもかかわらず、認知がされていない点にある。小売業も卸売業も全体で連携を進めていくことが必要である。認知し、流通BMSのハードルが下がれば小売業はEDI化が進むし、VAN会社・システム会社はデータ量やサービスが増える。卸・メーカーは個別開発のコストがかからないので、業界全体がwin-win-winになる。中小企業に向けて進めていきたい。
 今後、標準化メリットは増大していく。2023年からインボイス制度が始まる。暫定措置として区分記載請求書等保存方式が実施されるが、二重投資を避けるため2019年10月からインボイスに対応するように業界全体が動いている。
インボイスに対応する方式は現在の受発注の方式である紙、固定長、流通BMSのパターンがでてくることになる。
固定長の場合は今から個別対応していくこととなり卸もシステム会社も物理的に無理がある。しかも、IP網への移行もありすぐに変えないといけないのに労力とお金をかけて対応するという、固定長の選択肢はない。そのため、紙で行うか、流通BMSで標準化するしかない。これが標準化のメリットであると考える。
 さらなる効率化にむけた動きもある。今年の12月に全銀EDIシステムが稼働する。入金消込が自動化できたり、業務の効率化が実現できるための基盤である。これも業界標準化のメリットであると思う。
 流通BMS標準を進化させる動きもある。JCA手順では出荷データに返品データを入れることが多い。しかし、流通BMSの標準では対応していないため、返品受領メッセージ「卸・メーカー開始型モデル」の標準化を行った。さらに、出荷梱包紐付有り「出荷開始型モデル」も標準として追加された。
 マッピングチェックの重要性について紹介したい。流通BMS導入時にはマッピングチェックを受けてほしい。流通BMS協議会でマッピングチェックを行っている。小売業様の取引先説明会後にマッピングシートを修正するのは二度手間であり、卸の対応が難しい場合もある。マッピングシートチェックを事前に受けていれば問い合わせも減少し、スムーズな流通BMSの展開にもつながる。小売業様やシステム会社には必ずお願いをしたい。
 最後に、今後流通業界に関する多くのイベントが控えているが、全てに個別対応をしていくと大変なことになる。
標準で簡単にしてなるべく負担を減らしたい。この機会に業界標準を強く意識していただきたい。
 一般的なメリットとしては、標準化、EDI、インターネット等あるが、一番のメリットとしてはインボイス制度に標準対応できるということだと思っている。さらにIP網移行の対応もでき、2021年からも安心して受発注ができる。
 将来的には受発注請求・支払以外の決済の業務効率化の拡大も期待できる。

インボイス制度はシンプル!運用に合わせて工夫して対応してほしい!

パネルディスカッション『インボイス制度におけるシステム対応について』

財務省 主税局税制第二課 加藤 博之課長補佐
<パネリスト>
(株)杏林堂薬局 情報システム本部 情報システム課 松山 義政シニアマネージャー
花王グループカスタマーマーケティング(株) 川口 和海マネージャー


加藤氏:主税局税制第二課で消費税を担当している。本日はこのような説明のお時間をいただいたことに感謝。
2019年10月の消費税率10%への引上げと同時に消費税「軽減税率制度」も実施される。軽減税率制度についてはある程度理解が進んでいると思うので、今回は2023年10月に実施される適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度について説明する。

【「インボイス」とは何か、現行制度との違い】

加藤氏:まず適格請求書(インボイス)とは何か、これを理解していただくために、パネリストの方に現行の消費税制度における「請求書等」と「インボイス」の違いをお聞きしたい。

松山氏:インボイスは買い手から求められたら売り手は必ず発行しないといけないもの。現行制度における請求書は、消費税法上、発行義務は無いと理解している。また、偽りのインボイスを発行した場合、罰則があると認識している。

川口氏:現行の請求書との違いという意味では消費税率、消費税額を明記することだと思っている。また、この消費税額についてはそれぞれの適用税率ごとに合計した取引金額から計算するということも重要だと思う。

加藤氏:ご認識のとおり。まずインボイスとは「売り手が買い手に対し、正確な税額・税率を伝えるツール」と覚えてほしい。また、売り手が事業者である買い手に求められた場合には、インボイスを交付しなければいけないという義務が生じる。ご発言いただいた通り、現行は消費税法上、「請求書等」に消費税額を記載する必要はないが、インボイスには消費税額を記載しなければならない。なぜ「正確な」消費税額を記載しなければならないかというと、軽減税率制度実施に伴い消費税率が8%のものと10%のものがでてくるため、売り手の適用税率の認識を買い手に正確に伝える必要がある。例えば牛肉は食品なので税率は8%だが、10%と書かれると間違いとなる。つまり、それぞれ品目ごとに適用税率を考えていただく必要がある。
 また、ご指摘はなかったが、消費税法上の「請求書等」の範囲が現行と異なることになる。すなわち、今回新たに「電子インボイス」という仕組みを設けている。これはインボイスを電磁的記録(電子データ)で取引先に提供することを認め、受け手は仕入税額控除を行うためには原則、その電子データをインボイスとして電磁的に保存することを求めるという制度。現在は「請求書等」を電子データで受け取っても、それを保存しておかなくても仕入税額控除が可能という取扱いを行っているが、インボイス制度後は仕入税額控除を行うためにはこのデータをインボイスとして保存しておく必要がある。これも現行制度との大きな違いとなる。なお、現在、法人税法上は受領した電子データを保存する必要があるので、結果的には現行どおり保存していただくということになる。
 したがって、現行消費税制度における「請求書等」と「インボイス」の違い、ポイントは、①インボイスの発行義務が生じる、②消費税額・税率を明記する必要がある、③仕入税額控除を行うために保存すべき書類(請求書等)の範囲に電子データが加わるという点である。

【何をインボイスとするか】

松山氏:インボイス制度は適格請求書等保存方式と呼ばれており、インボイス記載事項を書くのは「請求書」であり、必ず請求書をやり取りする必要があると思っていた。会場の皆さんの考えはどうなのか。

加藤氏:インボイスは「請求書」でないといけないのか?という事だが、最近は請求レスで請求書など出していない会社も多いと聞いている。実態はどうなのか、会場の方にお聞きしたい。

参加者:弊社は卸売業だが受発注、請求支払をEDIで行っている。そのうち50%ぐらいが請求レスになっている。取引の半分は請求書を発行しない運用である。その場合のインボイス対応はどうしたらよいのか。

加藤氏:結論から言えば、インボイスは「請求書」でなければならないということは無い。取引先とやり取りをしている何らかの書類・データでインボイス記載事項を満たしていれば良い。そこで、請求データのやりとりがないということだが、支払データなどはやりとりしていると思う。ただし、支払データは買い手から売り手に出されるが、インボイスは売り手から買い手に出すのが原則。矢印の向きが逆だがどうするか。この場合、買い手がインボイス記載事項を満たす支払データを作成し「仕入明細書」として売り手に確認をしてもらい、このデータを買い手が保存することで仕入税額控除を行うことができる。なお、確認の方法は、例えば「内容に誤り等があれば〇〇日以内に連絡ください」としておき、特に売り手からの連絡がなければ、「確認」があったということで構わない。これは、現行の仕入明細書の確認方法の取扱いと同様。したがって現在のEDIの支払データの中でインボイス記載事項を満たせば、矢印の方向が違っていてもインボイス対応可能。請求レスの場合は、他のデータや書類のやり取りでインボイス対応可能か検討してみていただきたい。
 また、インボイスは1つの紙やデータでなければいけない、との誤解もよく聞くが、そんなことはない。インボイス記載事項を満たしており、相互の関連が明確であれば、複数の紙やデータ全体でインボイスとしても構わない。その際、紙とデータが混在していても良い。
 何をインボイスとするかについて、典型的な例として、「納品書をインボイスとし、月締めの請求書はインボイスにしない」という方法や「納品書は現状通りで月締めの請求書のみをインボイスにする」という方法がある。インボイスの出し方は千差万別だが、小売と卸・メーカーでそれぞれどのようなインボイスが望ましいとお考えか、意見を聞いてみたい。

川口氏:我々メーカー側、インボイスを出す方とすれば、請求書は紙で、取引明細(納品書)はデータで出したい。軽減税率制度では商品名に軽減税率対象品目である旨を記載しなければいけないため、取引明細も請求書につける必要があるが、紙で取引明細をつけるとなると、ものすごい量の書類を送らないといけないし、小売にもものすごい量の書類を保存してもらわないといけない。また、JCA手順は対応してもIP網への移行の関係で、すぐにまた改修を行わなければならないため、大規模な開発、改修はやりたくない。出来ればデータも標準フォーマットで出したい。

松山氏:我々小売側、インボイスをもらう方としては、取引先となる卸・メーカーが多いため、ある取引先様からは支払データで、ある取引先様は請求データでインボイスを出したいなどと様々なことを言われると、対応が非常に煩雑であり、経済負担も含めて大変である。できれば、一つとは言わないが、業種業態それなりにパターンを統一していただき、それを受け入れたい。また、紙でもらうと膨大なページ数になる。

加藤氏:納品書が相当な枚数になり保存も大変だし、出す側も工夫が必要になる。最低限の改修でシンプルな対応方法として、現行の納品書データに軽減税率対象品目の印(※など)のみ記載し、請求書にそれ以外のインボイス事項を記載するというのはどうか。シンプルな改修で済むのでこれが現実的かもしれない。この場合、納品書はデータでやり取りをして、請求書はFAXや紙で送付する方法で問題ない。先ほど申し上げた通り紙とデータが混在していても、相互の関連が明確な形で保存していれば仕入税額控除が認められる。
 また、インボイスに記載する消費税額を計算する際の端数処理について、注意していただきたい。「インボイス」に記載する消費税額は「1請求書当たり、税率区分ごとにそれぞれ1回」というルールに従って端数処理を行う必要があり、例えば商品単位での端数処理は行えない。したがって先ほどの納品書と請求書を合わせてインボイスとするケースでは、消費税額の端数処理は請求書で、税率区分ごとにそれぞれ1回行うことになる。

【インボイス制度における「登録番号」】

加藤氏:2021年10月1日以降、インボイスに記載する「登録番号」を取得するために、税務署に申請する必要がある。申請は課税事業者でないとできない。登録番号の構成は法人の場合、法人番号に「T」をつけたもの、法人以外の個人事業者等は「T」に新たな13ケタの数字を振り出したものになる。準備を進めるにあたり活用していただきたい。

松山氏:現在、例えばGLNの様に業界で利用されている事業者コードを請求データ等に記載し、法人名等の記載は省略していることが多い。この場合、このコードに法人名と同様、登録番号を紐づけておけば、登録番号を請求データに記載しなくてもよいか。

加藤氏:現在、取引先コードで管理しているところが多いと思うが、このコードと登録番号が紐づけられていれば請求データ自体に登録番号を記載しなくても構わない。また、取引の相手方の名称(宛名)が取引先コードでも構わない。ただし、そのコードが誰であるのか分かるようなデータ一覧を保存しておく必要はある。なお、いつの段階で紐づけするかは後から紐づけておいてもいいし、データ交付の段階でも構わない。

【税額計算の方法】

加藤氏:インボイスには消費税額を書かなければならないが、売上税額と仕入税額の計算方法について、インボイス制度後は売上税額の積上げ計算を行っても構わない。ただし、売上税額を積上げ計算するのであれば仕入税額も積上げ計算する必要がある。また売上税額が割戻し計算であれば仕入税額の割戻し計算も積上げ計算も認められる。
 現在、スーパー等の小売事業者を中心に、レジでの売上に係る税額を積上げて計算する「積上げ計算特例」を適用している場合が多いと聞く。インボイス制度後も売上に係る税額の積上げ計算は可能だが、仕入税額についても積上げ計算しなければならない点に留意が必要。現状は仕入税額の積上げ計算を行っているところはほとんどないと思うが、インボイスに記載された消費税額を積み上げるだけであり、対応は比較的容易であると考えている。なお、売上税額を割戻し計算する場合、割戻し計算で算出した消費税額とレジに記録されている消費税額の合計が端数処理によってずれることがあると思うが、この点、特に問題はない。

松山氏:誤魔化しているわけではなく、税額計算の結果として差益がでるということだと認識している。

加藤氏:ご理解のとおり。
時間が来たのでディスカッションを終わりたい。質問等があれば、問合せをして頂ければと思う。