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報告・レポート

小売5団体合同 軽減税率制度とシステム対応に係る説明会
(北海道、福岡、大阪、東京)

 軽減税率制度の導入を2019年10月に控え、円滑な制度対応の要である情報システム対策はより重要となっている。このような中、流通システム開発センター(GS1 Japan)と小売5団体「オール日本スーパーマーケット協会、(一社)全国スーパーマーケット協会、(一社)日本スーパーマーケット協会、日本チェーンストア協会、日本チェーンドラッグストア協会」が共催する形で、小売5団体の正会員・通常会員(小売企業)を対象に全国4ヵ所で説明会を開催した。

 以下に、説明会の要旨を報告する。


内容

講演時間 講演タイトル・講演者 配付資料
(90分) 軽減税率制度の概要について  
(1.07MB)
財務省
主税局税制第二課 課長補佐
加藤 博之
(45分) システム対応のポイントについて
チェーンストア統一伝票を中心としたJCA標準の対応について  
(1.49MB)
一般財団法人流通システム開発センター (GS1 Japan)
(流通BMS協議会事務局)
データベース事業部 クラウドサービスグループ
兼 ソリューション第2部 新規事業グループ 上級研究員
梶田 瞳
流通BMSメッセージ標準の対応について
一般財団法人流通システム開発センター (GS1 Japan)
(流通BMS協議会事務局)
ソリューション第2部 部長
坂本 真人
卸売業における対応状況について  
(983KB)
花王グループカスタマーマーケティング(株)
カスタマートレードセンター 流通システムコラボG
マネジャー
川口 和海


東京会場風景 2019.2.12 明治記念館

講演要旨

軽減税率制度の概要について

財務省
主税局税制第二課 課長補佐
加藤 博之

財務省 加藤氏

飲食設備がある場所での飲食料品の提供について

 テーブル・イス等の飲食に用いられる設備(飲食設備)がある場所において、飲食させる役務の提供については標準税率(10%)の対象となる。例えば、キッズコーナーにあるテーブルやイス、または休憩用として置いているイスも飲食設備に該当し得る。飲食設備がある場合の飲食料品の提供については、持ち帰るかどうかの意思の確認を必ず行い、適用税率を判断する必要がある。一方、あくまで休憩のためのものとしてテーブルやイス等を設置している場合は、“飲食はご遠慮ください”などと掲示し、かつ実態として飲食に用いられない状態にしておけば客への意思確認は必要ない。“実態なし”とすることが重要である。飲食禁止の掲示があったとしても、実態として客が飲食していれば飲食設備になるため、飲食禁止の場所で飲食している客には注意を促すなどの店舗オペレーションを定めておくことが重要である。

リベートの考え方

 そのリベートが何の目的でやりとりされるものなのかを整理する必要がある。仕入れた商品の値引きならその商品の税率で値引きする。何かを行ったことに対する対価の支払いであれば標準税率の売上となる。現状、その性格が仕入れの値引きであっても、会計上は営業外収益や雑収入で処理していることもある。現状の会計処理は参考要素の一つでしかなく、さらに、計算方式により適用税率を判断するわけではない。今までは複数の税率ではなかったために問われなかったことも、今後は明確に区分しなければ適用税率のズレが出てしまい税務リスクとなり得ることに留意が必要である。

 取引事業者間で認識を合わせないといけない。小売が行う役務の提供なら、小売から役務の提供であることを卸・メーカーに伝え、仕入れの値引きなら卸・メーカーに仕入れの値引きであることを確認することが必要になる。

 まずは各社で目的を整理・明確にし、取引先と認識を合わせ、契約書に明記するなどの対応を早急に進めてほしい。

一体資産と一括譲渡

 一体資産がどういったものであるかはしっかりと整理してもらいたい。食玩やおまけ付きペットボトルなど、一体資産となるものも多い。一体資産の適用税率の判断は、小売が都度判断することは難しく、販売時に一万円以下ならメーカーの適用税率をそのまま適用することでよいとしている。

インボイス制度

 何をインボイス とするかも重要である。インボイスは1枚で完結する必要はなく、ひも付けて複数枚でインボイスとすることができる。伝票などで軽減税率である旨を示し、支払いなどで税率ごとの合計額と消費税率・消費税額を示せば、合わせてインボイスとすることができる。

 請求レスの運用も多くあると聞いており、支払いでも卸・メーカーの確認を得ればインボイスとして認められるようにしている。

 インボイス制度では、返品や仕入れの値引きなどが行われる場合、卸・メーカーから減額になる旨のインボイス(返還インボイス)を小売に出す必要がある。返還インボイスは、原則、卸・メーカー(売り手)から出す必要があるが、小売(買い手)から卸・メーカー(売り手)へ情報を送る向きも卸・メーカーの確認を得れば運用として認めることとしている。また、返還インボイスには、返品された商品の販売年月日を示す必要がある。この点、実務慣習を勘案し、事業者が継続している合理的な方法による記載を認める方向で調整する予定。

 チェーンストア統一伝票(B様式)や流通BMSも区分記載請求書等保存方式に向けて進めていると思うが、インボイスを含め不明な点があれば流通システム開発センターや会員となっている業界団体経由で問い合わせをいただきたい。

チェーンストア統一伝票を中心としたJCA標準の対応について

  一般財団法人流通システム開発センター (GS1 Japan)
(流通BMS協議会事務局)
データベース事業部 クラウドサービスグループ
兼 ソリューション第2部 新規事業グループ 上級研究員

梶田 瞳

 軽減税率制度は2019年10月から区分記載請求書等保存方式、2023年10月から適格請求書等保存方式(インボイス制度)と2段階に分かれている。この2つの共通点は、商品の税率を明示することと税率ごとに合計した対価の額を記載することである。インボイス制度ではこれに加え、登録番号や消費税額の記載の他、返還インボイスへの対応や端数処理のルールの変更などさまざまな対応が求められる。そのため、チューンストア統一伝票(B様式)も流通BMSもまずは区分記載請求書等保存方式に対応することを優先させている。

 チェーンストア統一伝票(B様式)においては、以下を推奨する。

  チェーンストア統一伝票(B様式)の様式・規格は変更せずに現行のまま使用することとする。
  「税抜き」「税込み」「非課税」「税率」の区分は伝票単位とし、その旨を伝票上に表示することを基本とする。ただし、「税抜き」についてはその区分表示を省略することができる。
  特にターンアラウンド型伝票について、軽減税率対象となる取引は、取引先間で協議の上、「軽減税率対象品目である旨」を自由使用欄のD欄またはG欄を利用して記載することを推奨する。
  軽減税率対象品目である旨は「ケイゲンゼイリツ」と表示することを基本とする。

 なお、「税率ごとに合計した対価の額」および、対価の額が税抜きであれば「税率ごとの消費税額」を記載する必要があるが、請求・支払にて記載することを基本とした。

 JCAデータ交換標準フォーマットの軽減税率制度への対応については、一定の限界があることに加え、今後の通信環境の変化なども踏まえて、第一義に「流通BMSへの移行」を推奨している。

流通BMSメッセージ標準の対応について

  一般財団法人流通システム開発センター (GS1 Japan)
(流通BMS協議会事務局)
ソリューション第2部 部長

坂本 真人

 伝票ごとに税率を分けるという考えは、伝票の考えを踏襲した。

 発注、出荷、受領、返品の各メッセージで軽減税率対象品目である旨を示し、税率ごとの対価の合計額は、支払メッセージで行うこととする。支払メッセージに対応できない場合は新たに作成する請求鑑メッセージを利用する。

 既に運用ガイドラインは公開しており、請求鑑メッセージは2019年2月に公開する予定である。

花王の軽減税率対応状況

花王グループカスタマーマーケティング(株)
カスタマートレードセンター)
流通システムコラボG マネジャー

川口 和海

花王CMK 川口氏

 軽減税率制度が始まるまであと8ヵ月しかない。早急に流通BMSを広げていきたい。

 伝票ごとに税率を分けてほしいが、混ざってしまうことも想定してシステム開発を行う予定である。ただし、税率が混ざる場合、請求書に商品明細を入れざるを得なくなる。多い企業では月に4万枚の請求書を送ることになり個別対応も考えたい。

 流通BMSは運用ガイドライン通りの対応を予定している。

 JCA手順は、現状、500以上のパターンに対応しており、全てを軽減税率制度用に開発することはコスト的にも時間的にも困難なため、紙での対応にならざるを得ないと考えている。

 花王では、マスタに適用税率の欄を用意し、受注・返品では税率を入れられるようにし、チェックも行う。出荷・納品では伝票ヘッダの管理を行い、売掛でも税額のチェックを行う。なお、税率を間違えていたら欠品する方法を検討している。

 税率ごとに伝票を分けるか、EOS/EDIの変更はどうか、インボイスのパターンはどうか、税込から税抜への変更などは早い段階で小売様に確認したい。

 軽減税率対応もIP網移行への対応も全て対応できるのは流通BMSと考えている。小売、卸双方がWin-Winになれるのは流通BMSしかない。