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ドラッグストアショーで流通BMS特別セミナーを開催
~2020年問題への対応と課題について~

 当協議会の正会員団体である日本チェーンドラッグストア協会主催の「Japanドラッグストアショー」が千葉の幕張メッセで開催され、ビジネスセミナーとして3月18日に「標準EDI(流通BMS)推進特別セミナー」が行われた。
 本セミナーは今年で5回目となり、「標準EDI(流通BMS)導入の必然性」~2020年問題への対応と課題について~」と銘打って開催され、ドラッグストア業界での導入促進を目的とした「標準EDI(流通BMS)業界標準導入プログラム」の紹介とともに、中小企業を対象とする流通BMSのサービスや、EDIとして今後連携が期待される銀行界の動きについてそれぞれ説明を行った。
 このうち一部プログラムの講演要旨を紹介する。


セミナー会場風景:2016年3月18日 幕張メッセ

標準EDI(流通BMS)推進特別セミナー プログラム

開始時間 テーマ 講師
13:30 JACDS業界標準化推進委員会 委員長挨拶
「標準EDI(流通BMS)の導入・推進にあたり」
日本チェーンドラッグストア協会 副会長
兼 業界標準化推進委員会 委員長
江黒 純一氏
(㈱クスリのマルエ取締役会長)
13:35 経済産業省からの御挨拶 経済産業省 商務情報政策局 商務流通保安グループ
流通政策課 課長補佐
荒井 雅也 氏
13:40 「INSネット(ISDN)データ通信」終了に向けた
IPへの移行について
NTT東日本
ビジネス開発本部 第一部門
ネットワークサービス担当 担当課長
山内 健雅 氏
14:00 『標準EDI(流通BMS)導入の必然性』
~2020年問題への取り組みと課題について~
日本チェーンドラッグストア協会
業界標準化推進委員会 委員
川口 和海 氏
(花王グループカスタマーマーケティング㈱
カスタマートレードセンター
流通システムコラボグループ マネージャー)
14:25 中小企業のための
「ベンサム『流通BMS』簡易版とスマホの活用」
~システム開発が簡単~
ベンサムネットワーク協同組合
遠藤 秀俊 氏
(サブネット ㈱シイエスシイ 常務取締役)
14:45 「銀行業界における決済高度化の取り組み」
~経理業務効率化へ向けた今後の展望~
みずほ銀行
トランザクション業務部
業務管理チーム 次長
藤本 壮師 氏
15:05 「流通BMSの最新動向」 流通BMS協議会 事務局
(一財)流通システム開発センター
ソリューション第2部 新規事業G
梶田 瞳

「様々な課題が迫る中で業界をあげてムリ、ムダ、ムラを省く活動が必要」

N日本チェーンドラッグストア協会 副会長
兼 業界標準化推進委員会 委員長
(㈱クスリのマルエ 取締役会長)
江黒委員長

数年に渡り、流通BMSの導入を訴えてきたがなかなか進まない。そのような中で、本セミナーの前に記者会見を実施し、記者の方々にも協力を依頼するなどの新たな活動も実施している。
今回のセミナーでは、強いメッセージを出していきたい。INSネットディジタル通信モードのサービス停止を受けて必要となる対応、そして流通BMSの説明をしてもらう。
対応にあたっては駆け込み対応も懸念されている。さらに、既にシステムエンジニアが足りない状況も起こっている。 消費税増税や複数税率があれば、今のままでは対応できずシステム改修が必要になる。確定していないことも多いが、さまざまなシステム対応が目白押しだ。
業界で、ムリ、ムダ、ムラを省く活動をしないといけない。

「流通BMSを通じた、需要創出を期待」

経済産業省
商務情報政策局 商務流通保安グループ 流通政策課 
荒井課長補佐

経済産業省は2006年より積極的に流通BMS策定に関わってきた。
サプライチェーン効率化には製造、中間卸、小売間で需要予測の精度を高め共有することで、無駄を無くし、最適化していくことが大切だ。
そのためには標準EDIを利用し、製配販の三位一体で進めることが必要だ。
IoTやビッグデータの活用にも繋がる。
しかし、流通BMSは大手企業に留まっているように感じる。
消費税の増税も予定され、INSネットディジタル通信モードもサービス停止が予定されている。これによるJCA手順の改訂も行わないと聞いている。
販売・経理などの業務作業の省力化を実現するには流通システムの標準化が必要である。経済産業省では、複数税率を想定して策定している流通BMSの導入を促している。
混乱が生じないよう万全の準備をする予定だ。中小企業庁では、事業者への軽減税率制度(案)の周知やシステム改修のための予算を設ける予定である。
オムニチャネルにつながるID-POSによるデータ活用により、付加価値を提供するサービスも新たに始まっている。
流通BMSが拡がることで、最終的には消費者満足の向上にも繋がるが、その拡大はまだまだである。全体最適が大切である。流通BMSを通じて、需要創出を期待したい。

「IP化は避けられない。インターネットを利用する流通BMSなどへの移行をお願いしたい」

NTT東日本
第一部門 ネットワーク担当 山内課長

固定電話を取り巻く環境は厳しく需要は減少している。IP化が進み、企業においてもブロードバンド化が伸張してきている。
これを受けてNTTは、NTTの局間(東京と大阪の局の間など)を司る交換機を無くし、IP化をなすルータに変えていく。交換機はもう保守できないというのも大きな理由の一つである。
「もしもしはいはい」の基本的な音声サービスは継続するが、データ通信は終了させる。
ISDNについては通話モードとディジタル通信モードがあるが、IP化によりこの2つのうち、EDI等で利用するディジタル通信モードは継続が難しく終了する。
終了のタイミングはオリンピックが終わった後の2020年度後半を予定している。
ISDNはPOS端末、CAT端末(クレジット、電子マネー)、警備端末、G4FAXなどで利用されている。
利用されているか確認する方法については、請求書等の明細に記載されている場合や、製品仕様書に記載されている場合があるため確認いただきたい。ただし、バックアップとして利用されている際には、通信がされず請求書に載らない場合もある。IT機器のサポートをされているIT企業などに確認していだくことも必要である。
今回の移行を機に、インターネットを利用する流通BMSなどの手段に早めに変更をお願いしたい。

「流通BMSは業界を超えた社会共通インフラ。メリット最大化を目指す」

日本チェーンドラッグストア協会 業界標準化推進委員会 委員
(花王グループカスタマーマーケティング㈱
カスタマートレードセンター 流通システムコラボG マネージャー)
川口委員

江黒委員長より、1月15日に日本チェーンドラッグストア協会として流通BMSの推進強化を記者向けに発表。多くの記者の方が参加した。この際に、2020年問題と流通BMSの推進と駆け込み対応について記載した宣言文書を配付し、説明を行った。これは、加盟企業にもご理解、ご認識していただき、流通BMSを更に進めていきたいという意思表示である。
今後は流通団体連名での発表も検討している。まだまだNTTのINSネットディジタル通信モードのサービス停止が知られていない。多くの記者の方に取り上げていただきたい。
続いて、業界標準導入プログラムのポイントを紹介する。
NTTのIP化移行スケジュールや初期投資にかかるコストも記載しているが、実際は売上の少ない小売も多く導入している実状も踏まえて進めていただきたい。
消費者利益の最大化を図るのが目的であり、そのために流通業全体のコスト削減が必要である。標準に沿わない利用があると、全ての卸がそれぞれ対応するためにそれぞれで開発することになる。標準を守ることは非常に大切である。
導入方法は自社導入型とサービス利用型の2つあり、それぞれの状況に応じて選択できる。
システムベンダー選択の際のポイントは2つあると考えている。1つは複数のIT企業に提案をもらうこと。2つ目は標準を提案してくれるIT企業を選ぶことである。標準を理解し、サポートをする企業でないと取引先全てに迷惑をかけることになる。
小売においても標準化を確かめながら進めていただきたい。導入費用も記載しているが、記載されている金額よりも安くしている企業は多くいる。確認してもらいたい。
IT企業の支援も非常に大切である。トータルで提案してくれるIT企業を選んでほしい。
導入のポイントは、2~3社のパイロットベンダーと打ち合わせをしながら進めることが大切であると考えている。取引先説明会では是非とも標準を守っていることをアピールしていただきたい。
花王の状況も紹介したい。今年は350社を目指している。しかし、まだまだ満足できるスピードではない。
全体の取引でも3割に留まっており、その他はレガシー手順とよばれるJCA手順などである。駆け込み対応が発生しないように早めに取り組んでいただきたい。
花王では小売業の幹部への訴えが重要と感じており、販売店会でアピールした。知らない方や、知識がない方がほとんどだが、その後検討を始めた事例もあり、効果を感じている。
また、花王独自にとったアンケートでは、190社中、流通BMSを知らないという企業は75社、知っている企業は115社。流通BMSの導入を計画している企業は253社中66社、計画していない企業は73社、未定は109社といった状況であった。このデータを元に、計画していない企業に地道にアプローチを進めている。
最後に、業界を超えた社会共通インフラを目指して花王として取り組んでいきたい。
流通BMSに切り替えるだけでは通信の切り替えにとどまってしまう。その際にBPRを考え、業務の見直しを計画していただきたい。どこに無駄があるか、どの業務をシンプル化できるか。それを考えることでメリットの最大化につながる。早期の導入をお願いしたい。

「流通BMSでも利用しているXMLで、お金に情報をつけて経理業務の効率化を」

「銀行界における決済高度化の取組」~経理業務効率化へ向けた今後の展望~
みずほ銀行
トランザクション業務部 業務管理チーム
藤本次長

金融庁金融審議会の決済業務等の高度化に関するワーキンググループ(以下、金融審WG)においてXML化について議論がなされた。これは、日本再興戦略での言及から、金融担当大臣からの諮問によるものである。ワーキングループでは有識者が集まり、流通システム開発センターが2014年に実施した実証も踏まえて議論を行った。実現したいことは、「このお金がどれのものか」を分かるように、情報を付け加えて送れるようにするというものである。
銀行は全銀レコードフォーマットを利用しているが、これらの情報を付け加えられる桁数は20桁しかない。これを流通BMSでも利用される、XMLとすることで繰り返して情報を入れることができ、技術的には無限大に情報を付け加えられるようになる。
銀行もお金を運ぶ物流会社と同じである。お金の内訳をいちいち確認せずとも分かるようにすることが目的である。
現在、このXMLへの移行に関する検討会を実施している。金融審WGにてまとめられた内容として2020年にはXMLへ完全移行する(エンド・デイト)とあるが、これについての論点整理を全国銀行協会が事務局となって検討を進めている。
この中では、流通BMS等の商流情報をデータでやり取りしていることが大前提との意見や、利用企業やその規模によるメリットの違いなどの議論を行っている。
XML化のチャネルは必須であると考えられているが、新しいシステムの構築コストについても話が及んでいる。
経理業務効率化のニーズを更に確認する必要があるが、事務コストの削減やペーパーレス化など色々なメリットが考えられる。