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「2015年度 流通BMS普及推進セミナー
~さし迫る!レガシーEDIからの完全脱却~」開催

 流通BMS協議会は、2月25日(木)に鹿児島のオロシティーホールで「2015年度流通BMS普及推進セミナー ~さし迫る!レガシーEDIからの完全脱却~」を開催した。
 流通BMS協議会では、2015年度の普及推進のテーマとして、「地方企業」と「中小企業」への拡大を掲げており、今までの6大都市中心ではなく、地方都市での開催となった。
 セミナーではNTT西日本 山下氏より、アナログ通信網のIP網への移行に伴うINSネットデータ通信の終了についてご説明いただき、インターネット利用への切り替えを呼びかけ、これを受けて、協議会事務局より流通BMSの導入状況と小売業の導入事例を紹介した。
 また、情報志向型卸売業研究会(卸研)の座長である、フジモトHD(株) 松本氏より、卸研の取り組みについてのご紹介と、自社事例についてご講演頂き、2020年度を見据え早期の対応を呼びかけた。
 さらに、(株)ヤオコーより流通BMS導入のメリットを紹介頂いた。
 以下、ヤオコー神藤氏の講演要旨を紹介する。

2015年度 流通BMS普及推進セミナーin鹿児島 プログラム

時間 内容
14:00
(30分)
「INSネット(ISDN)データ通信」終了に向けたIPへの移行について
NTT西日本 マーケティング部 業務推進部門
ネットワークサービス担当 担当課長
山下 健司 氏
14:30
(30分)
必要なEDI対応と流通BMS導入事例および最新情報
流通BMS協議会   事務局
15:00 休憩 (10 分)
15:10
(30分)
卸全体への影響とピップの流通BMS対応事例
フジモトHD(株)
情報志向型卸売業研究会(通称:卸研)
執行役員 情報システム室 室長
座長
松本 寿一 氏
15:40
(50分)
流通BMS導入メリットと将来の活用戦略
(株)ヤオコー

日本スーパーマーケット協会
情報システム部 副部長
兼 統括・WEB担当部長
情報システム委員会 委員長
神藤 信弘 氏

「流通BMS導入メリットと将来の活用戦略」

(株)ヤオコー 情報システム部 副部長 兼 統括・WEB担当部長
(日本スーパーマーケット協会  情報システム委員会 委員長 )
神藤 信弘 氏

小売業としての流通BMS導入ステップや、ヤオコーの展開内容・工夫点利用方法を中心に紹介する。

ヤオコーについて

 埼玉を中心として142店舗を運営。全店が圧倒的な地域一番店になることを目指している。公開企業として連続増収の記録を更新中である。

流通BMSへの取り組み

 日本スーパーマーケット協会として物流クレートの標準化と流通BMSの2つに取り組んでいる。小売業界のリーダーとして早目に流通BMSを導入した。当時は、卸でも知らない人が多かった時代もあった。もともと品揃え指向型でアッパー中心のシェアだったが、その範囲を広げた結果さらに多品種となった。そのような中で、大手取引先向けとしては流通BMSが必須となるので、MDの一部として流通BMSの活用を求めた。スマクラは流通4団体※が利用推進を目的としてスタートしており、ヤオコーがリードして導入を決めた。
 導入期間はスタートからエンドまで半年程。流通BMSの基本方針に準拠したWeb-EDIについては、実質2か月半程度で導入を行った。取引先説明会と切り替えまでのタイミングは3か月程度みて導入を実施。導入にあたり小売業は1度しか説明会を開催しない。IT企業で手順、取引先へのアプローチ、スケジュール管理なども含めてサポートをしてもらえたことが大変助かった。現在では数社JCA手順が残っているが、ほぼ無くなっている。
 INSネットのディジタル通信モードの話を聞く限り、かなり危機的な状況と感じている。小売側の協会としてもかなり懸念している。

※流通4団体:日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、新日本スーパーマーケット協会、日本ボランタリーチェーン協会

流通BMSへの展開

 第1フェーズはグロサリ取引から始めた。主にセンター納品である。センターでは通過、在庫の2つの機能があるのでこれに対して同時進行でスタートした。その後、生鮮チルド系への展開を行った。
 流通BMS準拠のWeb-EDIを利用する企業が300社あったため、短期ではあったが進捗管理を行って実施していった。
 第3フェーズとして、デリカセンターを新設した。デリカセンターでは惣菜のパックものを作ったり、原材料の組み合わせを梱包して出荷するキット商品など、手前の流通加工を行っている。
 1か所に対してデータをつなぐハブ・アンド・スポーク的な役割としてスマクラを利用している。

第1フェーズ

 グロサリについては、T/C、D/Cと2つのグループ機能にデータ交換を行った。
 T/Cには難しいメッセージはないが、D/Cについては在庫情報のやりとりも含めて取引先とセンターでデータ交換を行う。事前準備に時間がかかったが、いくつかの取引先とテストを行い、切り替えを実施した。取引先と物流センターを同じ流通BMSで接続した。そのため、以前は物流センターが増えると取引先はそれぞれに対して接続する必要があったが、常に1か所でコントロールすることができ、センター増設の接続の際も効率化が図れる。通信時間は合計で1時間ぐらい早くなり、大きなメリットになっている。T/C型については、発注から納品までのサイクルが短く、受信から出荷データ作成までの時間短縮ができたことで、時間に余裕ができた。センター側も早めの納品が実現し、夕方や夜の作業が減った。

第2フェーズ

 生鮮のEDI化は遅れている。もともと、Web-EDIのヤオコーオリジナル版でEDIを行っていたことで、EOS発注を生鮮も含めて多く実施していたため、流通BMSへの切り替えにあたっては大きな問題はなかった。
 発注予定のメッセージはあまり使われていないかもしれないが、もともとヤオコーでは利用していたこともあり活用できた。Web-EDIは取引先に負荷がかかる面もあるが、鮮魚、青果は比率が高い。Web-EDIは流通BMSの基本方針に準拠させないといけない。食品スーパーも含めて小売業は自社、個社用のWeb-EDIが多いので、取引先からも苦労していると聞く。協会としても各社にそういったことがないようにと話をしているが、無くならない。コストや切り替えの負荷を懸念しているためだと思うが、小売が取引先に対して迷惑がかからない取引をしないといけない。最終的には取引コストに反映するだろうし、万が一の時に協力いただけないかもしれない。小売のスタンスとしては、取引先がいかに楽になるかということを前提に、効率やコストを考えないといけない。

第3フェーズ

 デリカセンターが非常に古く、老朽化していたため新しいセンターを立ち上げた。
 店舗からの発注はすべてEOSだったが、デリカセンターで使う原料はFAX発注であったため、これを機に流通BMSに対応した。
 対象となるメッセージとしては、発注、出荷、受領を実施し、多くの効果があった。
 最終的にデリカセンターとチルドセンターの間も出荷データでデータ交換をしている。

第4フェーズ

 流通BMS協議会に変更要求(CR)が提出され、オフライン発注に対する出荷から始まるメッセージと標準納品明細書が新たに標準として追加された。オフライン発注が非常に多かったため、100%EDI、EOSという小売業の目標はなかなか実現できなかったが、この標準化により小売も取引先も紙による手間が非常にかかっている業務がさらに効率化することができた。

軽減税率について

 来年の軽減税率導入に向けて内容が詰められている。複数税率への対応は、JCAフォーマットの場合は項目がなく、何らかの場所を使ってデータを送る必要がある。送り方は追加カスタマイズになるだろう。チェーンストア統一伝票を使う場合においてもいずれ業界内で煮詰める必要がある。伝票1枚には同一税率の商品とすることを前提とすれば請求・支払まで対応ができると考えている。

最後に

 情報システム部門は、基幹系だけをやる時代ではなくなり、それ以外のウエイトが急速に高まっている。オムニチャネル対応が目の前まで来ており、お客さんはそれが既に当たり前になってきている。
 日本の多くのスーパーも取り組んでいるが、システム的に出来上がってはいないのではないだろうか。ECやネットスーパー、オムニチャネルに対して情シス部門がこれから対応していなかければならない。その為には、共同化、共通化できるところは行い、違うところで差別化することが必要だ。会社は営業部門にもっと力を注ぐ仕事を求めている。
 流通BMS導入の議論は、早く卒業し次にいかないと時代は待ってくれない。流通BMSは物流やデリカセンターのような拠点を追加する際に早く対応でき、コストが下がる。取引先も開設にあたってミスなく対応できる。物流関連の項目が非常に多く、ロジスティクス上で効果を生む。陳列場所、温帯管理、物流ラベル、荷姿、出荷梱包の紐付など、ピッキングの精度向上、センター内・店舗での効率化等の活用がまだできると考えている。
 大手流通業の業務をそのままできる、良いところを組み込んで出来ているので少なくともそこまでのレベルアップができる。活用しない手はない。流通BMSも新しいサービスをプラスして更なる効率化を目指している。今後に期待してほしい。